最高裁判所第三小法廷 昭和37(オ)396 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人稗田秀雄の上告理由一第一、二点について。
原判示によれば、被上告人らが本訴において抹消を求める登記を受け付けた官署
が武雄区裁判所小田出張所(現在佐賀地方法務局江北出張所)であつたことは原裁
判所に顕著な事実であるというのであるから、一審判決が主文第一項において右登
記の受付官署を「佐賀地方法務局江北出張所」と表示したのは「武雄区裁判所小田
出張所(現在佐賀地方法務局江北出張所)」の誤謬であることが明白である。かよ
うな判決に対する控訴に基づき控訴裁判所が控訴棄却の判決をするに際し、右誤謬
を民訴法一九四条にいわゆる「明白ナル誤謬」と認めたときは、職権をもつて判決
理由中にその理由を判示し、その主文において一審判決主文中「佐賀地方法務局江
北出張所」とあるを「武雄区裁判所小田出張所(現在佐賀地方法務局江北出張所)」
と更正しても違法ではない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨はすべ
て採るをえない。
同一第三点について。
妨害排除請求としての登記抹消請求の訴は、妨害者たる登記名義人を相手方とす
べきである。また、不動産共有者の一人は、その持分権に基づき、当該不動産につ
き所有名義を有する者に対しその登記の抹消を請求することができるものと解すべ
きである(昭和二九年(オ)第四号同三元年五月一〇日第一小法廷判決民集一〇巻
五号四八七頁参照)。したがつて、本件山林の共有者のうちの一部である被上告人
らが右山林につきなされた所有権移転登記の名義人であるDの相続人たる上告人に
対し右登記の全部の抹消を求めうるとした原審の判断は正当である。論旨は、独自
- 1 -
の見解に基づき原判決の違法をいうものであり、採るをえない。
同一第四点について。
被上告人らが本件山林の共有持分権を有すると主張してその確認を求め、上告人
が右主張を争う旨の陳述をして請求棄却の判決を求めたことは記録上明らかである。
したがつて、右確認の訴の利益がある旨の主張は口頭弁論にあらわれているものと
いうべきであるから、原判決に所論の違法はない。
論旨は採るをえない。
同二第一点について。
原審は、所論買受の事実を認めるに足りる証拠がないから上告人は被上告人B1
の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者ではないと判断したのであつて、右
判断は正当である。
論旨は採るをえない。
同二第二点について。
所論虚偽表示に関する当事者双方の主張は、被上告人ら主張の請求原因ないしは
上告人主張の抗弁に関連するものではないから、原審が右主張について判断しなか
つたのは当然であり、原判決に所論の違法はない。
論旨は採るをえない。
同二第三点について。
所論は、本件立木が被上告人ら外一名の共有に属することを前提とするものであ
るところ、記録によれば、被上告人らの本件損害賠償請求は被上告人らがそれぞれ
単独で所有する立木の不法伐採をその原因とするものであることが明らかであるか
ら、論旨はその前提を欠くものであつて採るをえない。
同二第四点について。
所論伐採立木の種類及び数量に関する原審の認定は、これに対応する原判決挙示
- 2 -
の証拠によつて是認することができる。
論旨は、結局、原審が適法になした事実の認定を非難するに帰し、採るをえない。
同二第五点について。
原審が所論過失相殺の抗弁を採用しなかつたことは、原判決挙示の証拠によつて
認めうる事実関係の下においては、これを是認することができ、原判決に所論の違
法は認められない。
論旨は採るをえない。
同二第六点について。
論旨は、理由齟齬をいうが、その実質は原審が適法になした証拠の取捨判断、事
実の認定を非難するにとどまり、上告適法の理由とならない。
同二第七点について。
原判示によれば、被上告人B1、被上告人B2の先代Eは昭和の初年頃本件山林
に植林をなし爾来これを管理してきたというのであるから、右事実関係のもとでは、
上告人が採薪及び下払をしたとしても上告人に本件山林の占有はないとした原審の
判断は是認できる。
したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採るをえない。
同二第八点について。
論旨は、原審が適法になした事実の認定を非難するものであつて、上告適法の理
由とならない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 横 田 正 俊
裁判官 五 鬼 上 堅 磐
- 3 -
裁判官 柏 原 語 六
裁判官 田 中 二 郎
- 4 -